
はしか(麻疹)とは?
はしか(麻疹)は、麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の熱性発疹性感染症です。このウイルスは非常に感染力が強く、主に空気感染によって広がります。感染者と同じ空間にいるだけで感染するリスクが高く、潜伏期間は約10~12日です。その後、39℃を超える高熱、咳、鼻水、結膜炎、そして全身に現れる特徴的な赤い発疹が見られます。
特に注目すべきは、口腔内にコプリック斑と呼ばれる白い斑点が現れることです。症状は通常7~10日間続きますが、肺炎や中耳炎、脳炎といった合併症を引き起こす可能性もあります。先進国においても、1000人に1人が死亡するリスクがあるため、十分な注意が必要です。
近年の流行状況
日本におけるはしかの流行は、2007~2008年にかけての大規模な流行が契機となりました。この流行の背景には、過去のワクチン接種体制の不備や、抗体価の低下による免疫の減衰があると考えられています。特に、1回接種のみで免疫が不十分な人や、ワクチン未接種の成人層が感染の拡大を助長しました。
平成27年(2015年)には、WHO西太平洋地域事務局から日本が麻疹排除状態にあると認定されましたが、その後も海外からの輸入例や小規模な感染例が散発的に報告されています。特に、最近のグローバルな人の移動や旅行の増加により、麻疹ウイルスの海外由来型の侵入リスクが高まっています。
2025年以降の感染動向と予測
2025年7月10日以降の感染動向は、国内外のワクチン接種率の変化、ウイルスの遺伝子型の変異、国際的な人の移動状況によって大きく影響を受けると予想されます。特に日本国内では、過去の排除認定を維持するために、若年層から成人にかけての2回接種率の向上が不可欠です。
2025年6月25日の厚生労働省の発表によれば、医療・教育関係者や海外渡航者に対する積極的な免疫確認と追加接種の推奨が強化される見込みです。将来的には、免疫低下集団の増加に対応するため、ブースター接種の必要性が再評価される可能性もあります。
ワクチン接種の重要性
麻疹ワクチン接種は、感染を防ぐための最も効果的な手段です。日本では、2回接種により約95%の免疫獲得が可能とされています。特に、ワクチン接種歴が不十分な成人や医療・教育従事者、海外渡航者は感染リスクが高いことが懸念されています。
診断技術の進歩
最新の検査技術として、IgM抗体検査やPCR検査が推奨されています。これにより、正確な診断が可能となり、非典型例の早期発見や感染拡大防止が期待されています。感染症発生動向調査のリアルタイム化が進むことで、感染拡大に対する迅速な対応が可能になると予測されています。
国際的な流行と対策
国際的には、アジア・アフリカを中心とした途上国での流行が続いており、海外からの輸入感染例に対する警戒が必要です。国境を越えた感染症対策の強化や情報共有が不可欠です。
特にグローバル化に伴い、感染症の国境を越えた拡散リスクが増加しているため、渡航歴のある患者の早期診断が重要です。
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