
デリーのAQI(空気品質指数)の現状
インドの首都ニューデリーでは、2025年12月現在、大気汚染が依然として深刻な問題です。特に冬季には、AQI(空気品質指数)が「危険」レベルに達することが頻繁にあり、呼吸器疾患や心疾患のリスクが高まっています。AQIは、PM2.5やPM10、二酸化窒素(NO2)、二酸化硫黄(SO2)、一酸化炭素(CO)、オゾン(O3)などの汚染物質の濃度に基づいて算出され、0から500のスケールで示されます。デリーは世界で最も空気汚染が深刻な都市の一つで、特に11月から2月にかけてAQIが著しく悪化します。
AQIの評価基準
- 0-50: 良好。空気は新鮮で無害。屋外活動に問題なし。
- 51-100: 普通。大多数にとって許容範囲。敏感な人は軽度の不快感あり。
- 101-150: 敏感な人々にとって健康に悪影響。
- 151-200: 健康に悪影響。全ての人が健康影響を感じ始める。
- 201-300: 非常に健康に悪影響。緊急の健康警告。
- 301以上: 危険。生命に関わる健康リスク。
デリーAQIの主な原因
デリーのAQIが高い原因は、以下の複合的な要因によるものです。
農村部からの煙霧
毎年11月以降、農村部での焼畑農業による煙霧がデリーに流入し、PM2.5およびPM10の濃度を急激に高める要因となっています。
都市交通と工業排出
デリー市内の交通量の増加、特にディーゼル車の排出がAQIの悪化に寄与しています。さらに、工場からの有害物質の排出も深刻な問題です。
建設現場の粉塵
建設工事に伴う粉塵が空気中に舞い上がり、AQIを悪化させる要因の一つです。
気象逆転層の影響
冬季には気温の低下に伴い、逆転層が形成され、汚染物質が地表近くに滞留しやすくなります。
周辺地域からの汚染物質流入
ハリヤーナー州やウッタル・プラデーシュ州からの汚染物質の流入も無視できません。これらの地域の交通や工場からの排出が、デリーの空気質に影響を与えています。
健康への影響
過去3年間で、デリーでは呼吸器疾患の患者数が20万人を超えています。特に子供や高齢者、喘息患者は、AQIの悪化による健康被害が深刻です。喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心疾患の増加が報告されており、これらの疾患はAQIが高いときに特に悪化します。
政府の対策と今後の展望
デリー政府は、汚染ピーク時のディーゼル車規制、建設工事の一時停止、工場排出基準の強化など、緊急対策を講じています。しかし、根本的な解決には至っていないのが現状です。
2026年以降の予測
2026年以降、政府は新たに大気清浄技術の導入を進める予定であり、都市全域に設置される大規模な大気清浄装置や、リアルタイムの空気質モニタリングを強化するスマートセンサーの普及を計画しています。これにより、汚染源の特定と迅速な対応が可能となる見込みです。
持続可能な開発への道
再生可能エネルギーの推進や公共交通機関の電動化、農業における焼畑農業の代替技術の普及が進むことで、大気汚染の根本的な要因の削減が期待されます。しかし、気象条件の不確実性や人口増加による交通量の増加、周辺地域からの汚染流入などの課題も依然として存在します。
市民の健康を守るために
市民の健康被害を軽減するためには、マスク着用や室内空気浄化装置の利用拡大、健康リスクへの意識向上が不可欠です。国際的な知見を活用した都市設計の見直しや緑地の拡充など、長期的な環境改善策も進められる見込みです。
興味深い事実
- デリーの冬季AQIは世界の主要都市の中でもトップクラスの悪さで、時には喫煙13本分の有害物質を吸い込むのと同等の健康リスクがあるとされています。
- AQIが『危険』レベルに達すると、喘息症状が激増し、呼吸困難で救急搬送される患者が急増します。
- デリーは逆転層による大気汚染滞留の典型的な例であり、同様の気象条件を持つ他の都市でも類似の問題が報告されています。
- 焼畑農業の煙霧は毎年恒例の現象ですが、代替技術の普及は遅れており、農家の収入保障と環境保護の両立が課題となっています。
- リアルタイムのAQIモニタリングは市民の健康意識向上に寄与し、マスク着用率の増加や屋内空気浄化器の普及を促進しています。
- 国際的な都市環境改善策の例として、北京やロンドンでは大気浄化技術と交通規制の組み合わせで数年単位でAQI改善に成功していますが、デリーはこれらの事例を参考にした対策を強化中です。

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