
バイコヌール宇宙基地の歴史的重要性
バイコヌール宇宙基地は、1955年にカザフスタンで建設が始まり、1961年にはユーリ・ガガーリンによる初の有人宇宙飛行を成功させた、世界最古の宇宙発射場です。ソビエト連邦時代からロシアの有人宇宙飛行の中心的役割を果たし、国際宇宙ステーション(ISS)への輸送の主力となっています。この基地は、宇宙開発の歴史において金字塔的な存在です。
バイコヌール宇宙基地の事故の概要
2025年11月27日、バイコヌール宇宙基地で発生した重大事故は、ソユーズMS-28ミッションの打ち上げ直後に起こりました。発射台下部にある整備用キャビンが崩壊し、約20メートル飛散して地面に激突しました。このキャビンは、ロケットの準備や点検を行うための重要な構造物であり、その損壊は発射台の機能に直接的な影響を与えました。
ロシア連邦宇宙局(ロスコスモス)は、複数の損傷を認め、修復には半年から最長で2年を要する見込みです。事故の原因は詳細に公表されていませんが、発射時の巨大な熱、振動、圧力が、老朽化した整備キャビンの構造的弱点を露呈した可能性が高いとされています。
老朽化問題とその影響
バイコヌール宇宙基地は、ソ連時代からの高い技術的信頼性を誇り、多くの有人・無人ミッションを成功させてきましたが、施設の老朽化が深刻な問題として浮上しています。整備用キャビンや発射台構造物は1960年代以降に建造され、経年劣化が指摘されています。
今回の事故は、老朽化が進行する中で発生したものであり、ロシア国内で有人飛行に必要な認証を持つ他の基地が未整備であるため、バイコヌールの機能停止はロシアの有人宇宙飛行能力を事実上喪失することを意味します。
事故後の影響と今後の展望
2025年12月2日以降の見通しとして、バイコヌール宇宙基地の修復には長期的かつ大規模な作業が必要であり、最短でも2026年夏以降、最悪の場合2027年末から2028年までの間、有人宇宙船ソユーズや補給船プログレスの打ち上げが制約される見込みです。ロシアは、別の国内宇宙基地であるウストチヌイ宇宙基地やプレセツク宇宙基地の有人飛行適応化を急ぐ可能性がありますが、これらの基地は現在、有人飛行に必要な技術的認証やインフラが整っておらず、短期間での運用開始は困難と予想されます。
代替策として、国際的な協力や他国の宇宙港の利用を模索する可能性もありますが、ロシアの宇宙政策や国際関係の状況から実現は容易ではありません。長期的には、今回の事故を契機に、バイコヌールの全面的な近代化や安全対策の強化が進む可能性が高く、打ち上げ施設の全面的な刷新や新しい発射台の建設が検討されるでしょう。
国際宇宙ステーション計画への影響
バイコヌールの事故によるロシアの有人宇宙飛行能力の一時的な喪失は、国際宇宙ステーション(ISS)の運用にも影響を及ぼします。他のパートナー国(アメリカNASAや欧州ESAなど)が補完的な役割を強化する必要性が高まると予想され、これによりISSの運用体制に調整や遅延が生じる可能性があります。
さらに、宇宙飛行士の輸送手段の多様化についての議論が加速し、民間宇宙船の利用拡大や新規有人宇宙船開発の推進につながる可能性もあります。総じて、2025年末以降の数年間はロシアの有人宇宙飛行にとって試練の時期となり、宇宙基地の事故対応と復旧、代替施設の整備、国際協力体制の再構築が焦点となるでしょう。

コメント